きっと大丈夫が何故ヤバいのか
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2月25日 生後160日
もうすぐ2月も終わりだ。
朝方3時頃、一度だけ嘔吐した。
嘔吐の後は眠れなそうでずっと抱っこしていた。
そこから寝始めたのは5時。
1時間ほど寝た。
わたしと同じように、いやわたしよりも、虹翔はこの入院生活、普通の赤ちゃんに比べて、寝不足な生活が続いていたと思う。
モニターの音や点滴アラームの音。
隣の部屋や廊下から聞こえてくる泣き声。
眠たい時にも、やらなければいけない処置。
寝ている時にも起こされ、時にはやらなければいけない痛いこと。
先生の診察や看護師さんの検温。
家にいればやらなくていいこと。
眠たい時に寝て、起きたい時に起きる。
それがずっとできない生活。
どれほどのストレスがかかっていただろうか。
みんなが聞いているテレビの音は聞こえなくて、パパとママの会話が聞けるのも夜の数時間。
ママのご飯を食べる姿だって見たことないし、一緒にお風呂だって入れない。
毎日見るのは白衣を着た人たち。
いつも見えるのは同じ天井に同じ柵、同じ景色。
病院の外はもちろん、部屋の外すら出られない。
つい最近、冷たい風を知らないと思っていたのに、外はもう春の準備をしていた。
ひょっとしたら虹翔は、この生活が普通で当たり前で、ここがお家だと思っていたかもしれない。
それは、私にとっても、ちょっぴり悲しい現実だった。
早く本当のこの世界を、楽しいことがたくさんあるこの世界を、教えてあげたかった。
今日は、パパに休みを取ってもらった。
朝、今度わたしが乗ることになる新しい車の契約をしに行ってもらった。
今までわたしが乗っていた乗用車にパパが乗り、新しい軽自動車にわたしが乗る。
ナンバーはもちろん「710」
用事を済ませ、病院へ来てもらった。
パパが到着して、主治医の先生と担当の先生から、退院前の話を聞いた。
そこで言われた、また新しい言葉。
前にお母さんに少しお話ししたように、現在の虹翔くんに、疑わしい免疫不全症があります。
「NEMO」という遺伝子が関係する免疫不全症です。
「ネモ?」
初めて聞く。なんだろう。
岐阜、東京、愛知など、県外のたくさんの病院の先生たちが一緒になって、今考えてくれています。
これに関する自然免疫についての検査を、岐阜の病院でやってくれることになりました。
虹翔1人の診断のために、これまでたくさんの人たちが関わってきてくれている。そして今も、たくさんの人が頭を悩ませ、なんだろうなんだろうと考えてくれている。
もし、この病気が確定すれば、
虹翔くんは、
骨髄移植が必要になります。
たくさんの先生が頭を悩ませてくれて、やっとここまで来た。診断がつくまでもうすぐそこ。
早く診断がついて欲しいと思っていたのに、、
「骨髄移植」
その言葉はやっぱり、とても重たかった。
前にも聞いた骨髄移植の話。
まだ確定ではないけれど、もしかしたら虹翔はこの道を通らなければならないかもしれない。
もし診断がつけば、必ず通ることになるだろう。
怖かった。
本当は、怖かった。
でも、前を向くしかない。
虹翔を助けるには、骨髄移植しかないのだから。
そんな気持ちの方が勝っていた。
それはきっと、退院がすぐそこまで来ていたから。
きっと大丈夫、虹翔なら、大丈夫。
そんな思いがやっぱりあった。
今思えば、この時はまだ、確定されたわけではなかったから、ちょっと甘い気持ちがあったのかもしれない。
でも、どんなことがあっても絶対に大丈夫。
虹翔の生命力を、医学の力を信じる。
そう思った。