緊張して顔を上げたら、そこにいたのはスーツを着ためっちゃイケメン。
「……え」
うそ。え?え?
「……久しぶり。潤。」
「…翔くん? ……なんで?」
ビックリしすぎて動けない。記憶より数段カッコいい翔くんがそこにいた。
よく見たいのに、あれ、なんかぼやけて、見えなくなってきた……。
「わ!わ!泣くなよ、潤!」
翔くんが慌ててポケットからハンカチを出して俺の目を乱暴にゴシゴシこすった。
「翔くん痛いよ !」
「あ!ごめん!ほら、これ使って」
俺にハンカチを渡して焦った顔して俺を見た。
「……翔くんがハンカチ持ってるなんて」
「そ、そりゃ、もう、社会人だし。」
「そっか。そうだよね。」
ひとしきり涙を拭いて、はあ、と大きく息を吐いた。
「……元気だった?潤。」
翔くんを見たら、翔くんも少し瞳を潤ませていた。こんな顔初めて見た。
「翔くん。」
なんでここに、とか、今までどうしてたの、とか、翔くんに聞きたいこともたくさんあったけど、混乱する頭の中でもさっきの滝沢さんの様子とか、これまでのことを考えると何となく繋がってきて、きっと滝沢さんが翔くんを見つけてくれたんだってわかった。俺のために。
モデルを続けていればそのうち翔くんに会えないかな、っていう俺の気持ちを知ってて、翔くんにつながる仕事を見つけて、こうやって2人になれるようにセッティングしてくれたんだ。
じゃあ、俺は、もう一度翔くんの近くにいてもいいってことだろうか。
もう一度、気持ちを伝えてもいいんだろうか。
いや、待って。翔くんの方はどうなんだろう。俺に会えて嬉しい?
あ、もしかして彼女だっているかも。このハンカチだってきっちりアイロンかかってるし。ワイシャツだってピシッとしてるし。翔くん自分じゃ絶対しないよ。いや、クリーニングかも。いや、それより翔くん、
「…黙ってないでなんか言えよ。」
バツが悪そうに翔くんがいう。
「あ、そうかごめん。あの翔くん、あのね。えっと……」
何から話せばいいのか混乱して焦っていると、翔くんが一歩近寄って、ハンカチを持った俺の手を握った。
「さっき滝沢が言ってたけど、今日はこれで終わりなんだろ。…この後、会える?」
「…うん。大丈夫。翔くんはいいの?」
「いいよ。俺も仕事終わったら予定なんか何にもないし。」
そう言って、少し照れたように笑った。
「お前の話はざっと滝沢から聞いたから。お前が聞きたいこと全部話すよ。何年分だ?5年分?」
そして少し間をおいて、
「それで、さ。そしたら、俺の気持ちも、聞いてくれる?」
伺うように揺れる眼差しに、俺はまた泣きたくなってきた。
俺だってそうだよ。
「翔くん。俺も話すこといっぱいあるんだ。」
そう言ったら、翔くんが近づいて、俺をギュッと抱きしめて、俺の肩に顔を伏せた。
「翔くん」
ずっと記憶の中にしかなかった翔くんのぬくもりが、今ここにあるなんて。
なんだか夢みたいで信じられないけど、胸が痛いくらいに苦しい。
こんなに会いたかったなんて。俺は本当に翔くんに会いたかったんだ。
「……ごめん。潤。あの時の事ずっと謝りたかった。酷いことしてごめん。あんな風に傷つけたくなかったのに。短気起こしたこと、ずっと俺は後悔してた。あの時、ちゃんと話を聞かなかったこと、お前を信じなかったこと。…ずっと後悔して忘れられなかった。」
それから顔を上げて、
「もう終わった話だって思ってたけど、俺の中で全然終わってないや。お前の顔見たらよくわかったよ。」
って、笑ったけど、翔くんの瞳には涙が光ってた。
「会えてよかった。」
今夜ゆっくり話そう。
翔くんは俺の頬に手でそっと触れて、そのまま顔を近づけようとして、あ、って気がついたような顔をしてやめた。ちょっと眉を下げて、照れくさそうに笑う。
キス、してくれても良かったんだけどな。
でもそれは、ちゃんと2人で話して、翔くんの気持ちをちゃんと教えてもらってからにしよう。
もう曖昧なのは嫌だ。
こんなに長く悩んだんだから。
きっと、翔くんも同じ事を思ったんだと思う。俺を見つめる優しい瞳が、
きっと大丈夫だって俺に勇気をくれた。
「…じゃあ、後でまた連絡する。店とか予約しとくから。」
「うん。ありがとう。」
「それとさ、…それ、衣装?」
「え?ああ、そうだけど?」
「あのさ、それ。ちょっと…胸元開きすぎじゃない?」
「は?」
「あ。いい、いい。ごめん余計なこと言って。」
赤い顔をして翔くんがそっぽを向く。変かな?これ。オシャレだと思うんだけど。
「…あの。翔くん?」
「…なんだよっ。」
「撮影、見ていってくれるの?」
「見るよ!俺ホント知らなかったんだからな。全くなんでお前モデルなんかやってんだよ。なんか変なカッコとかさせられてるんじゃないだろうな」
「変なのって。そんなの滝沢さんが受けて来るわけないでしょ。それにまだ大して売れてないんだし。今日の仕事でも大きい方なんだよ。滝沢さんこの会社の仕事ばっかり受けてきて、ファッション誌にあんまりまだ売り込んでなかったんだから」
あ、そうか。
そこでやっと気がついた。それで翔くんにたどり着いたんだ。俺のためにマネージャーになって、俺のために仕事を選んできていた先輩の心遣いが今になってよくわかった。
さっき抱
しめてくれたのは、あれが最後で、俺を翔くんに返すつもりだったんだ。罪滅ぼしだって以前言ってたけど、だからってそんなに俺のためにしてくれなくてもよかったのに。
「…全部、滝沢さんのおかげだよ。」
「…うん。わかってる。」
「本当によくしてくれたんだよ。先輩は。本当にいい人なんだ。」
「知ってるよ。」
「ずっと一緒にいてくれて、就職だって決まってたのに変えて、俺のマネージャーになってくれたんだよ。」
「それも聞いたよ。」
「先輩ともこれから仲良くしてくれる?」
「それはさっき断られた。」
「え?」
「…もう滝沢の話はいいだろ」
ちょっと不機嫌になった翔くんの様子があの頃と全く変わらなくて、おかしくなった。
ほんと、心が狭い人だ。こういうところ、滝沢先輩とは全然違うけど。
それでも俺はこの人がどうしても好きなんだ。翔くんへの想いは俺の中でずっと変わらなかった。会えなかったこの数年の間も。
ずっと探していた。
もう二度と離れないように今日、たくさん想いを伝えたい。
「じゃあ、撮影の間ずっと俺のこと見ててね。」
そう言ったら翔くんはうん、って優しく笑って、行こうか、ってドアに向かって歩き出した。
☆The END☆
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全50話お付き合い頂きありがとうございました♡
2人は本当は仲良くなれたのに、っていうところと、タッキーは優しさ故に案外不自由だった、っていう事が今回書きたかったところでした♡っていうとなんだかタッキーの話みたいですけど、なにより3人の三角関係、しかも潤くんは無自覚で、このカワイイ子を間にして2人がバチバチしてたっていうのが1番の萌えです(〃ω〃)
今回は次のお話が出来上がったので、間をおかずに明日からアップします♡なぜ間を開けないかというと自信がなくて(^^;)
出来上がって気がついたんですが、エロのエの字も無いです(^^;)チューさえさせてませんでした(^^;)
軽い気持ちで読んで頂ければと思います(^^;)
いつか立派なエロを書けるようになりたい(°▽°)
ではでは、Tearsのご感想お待ちしてます♡
コメント入れたことのない方も是非♡ご感想聞いてみたいです♡メッセージでもどうぞ♡