バケツが生まれる

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バケツうれしいを、つないでゆく。

予定より２０分早く
トラックが到着。

トラックから作業員さん
たちが飛び降りてくる。

出発予想時刻は
１６時４０分。
１７時に貞彦さんが
帰宅するまでには
なんとか間に合う。

「荷物はすべてリビングに
　おいてあります。
　どんな積み方でも
　かまいません。
　なにが起こっても
　作業の手をとめず出発
　してください。向こうに母が
　いるので、私がこない場合は
　母にきいてください」

作業員さんが、運命のかかった
バケツリレーをしているかのよう
荷物を運び出す。

私もリュックをせおい
積み込み完了と同時に
家をでられるよう準備し、
作業員さんの援護をする。

そこへ、もう１台トラックが
とまり１人の作業員さんを
降ろし去っていく。
さらに２台のトラックが、数分おきに
きては、作業員さんを降ろし
５人以上になった。

予定より早く作業が
終わるとのことで
急いでタクシー会社に
電話して時間変更を伝える。

援護が必要なくなり
立ち尽くしていると
携帯がなった。

「●●警察署ですが
　待機してたら、離れた
　公園の陰からこちらの
　様子を伺っている
　女性がいました。
　心当たりはありますか」

「どんな女性ですか」

「確認をしにいったの
　ですが、見当たらなくて
　今、周辺の見回りしています」

貞彦さんじゃなくて
よかった。

でも女性に心あたりは無い。

まさか、私の知らない何者かを

利用して監視していた？

いろいろな疑心暗鬼が浮かびそう
になったので止める。

例えそうだとしても
警察がみつけてくれたんだし
後をつけられるような
ことがあれば、すぐわかる。

どちらにしても、数十分後
貞彦さんは帰宅して
私たちが消えたことがわかる。

１６時１４分
リビングのものが
すべてつみこまれた。

トラックが再び作業員さん
たちを迎えにきて去っていき、
荷物を積み込んだトラックも
無事に出発した。

私もタクシーに乗り込み
保育園へ。

安堵はまだない。
複数の作業員さんに
直接お礼の言葉を伝えら
れなかったことが心残り

だった。

会社のミスとはいえ、おそらく
現場の作業員さんは
上からいきなり
いわれた指示にも
かかわらず、この特別な
現場で全力を
尽くしてくれた。

タクシーが赤信号で止まった。
青になって左折したら、
２度とあの家をみることは
無いかもしれないと
思うと、急に涙が
溢れそうになる。

信号が、かわり
最後に家をみようと
振り返える。

遠目に見える、新婚当時から
ずっと暮らしてきた家。

そこに傘をさしながら
ハンカチで
涙をふき
こっちを見つめている
頑丈目さんが
たっていた。

はっきり目が合う。
とっさに、さよならの
手をあげようとしたところで
タクシーは左折。

もう２度と会えない。
抑えていた涙が
こぼれ落ちる。

引っ越しを開始した
時間は、頑丈目さんが
うちの家の前をとおって
スーパーにいく時間。

警察が目撃したのも
多分、頑丈目さんだった。

『ありがとう』

と伝えられないということは

なんて、苦しい事なのだろろうと
辛い。

いつもは思い浮かべない
神様を想う。

私は幸運なことが
あっても、そのぶん
悪いこともあるのだから
いい時だけ
神様に感謝はしない、
と、ひねくれている。

でも、今はどうすることも
できなくて神様を
たよった。

どうか頑丈目さんを含め
助けてくれた人たちに
不運なことが訪れたら、
私の感謝の
気持を幸運に変えて
届けてほしいと、
お願いを聴いてくださるよう
頼み続けた。

※数年前に離婚裁判をして

終わらせた記録です。

裁判後は、ずっと幸せにくらしています。

※貞彦さんに特定されないよう

フェイクをいれています。

詳しくかけない部分があり

申し訳ございません。

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