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ユノと初めて出逢ったその夜、全く売れていなかったリヤカーの中の花を全部買ってくれたユノからの交換条件で、コンラッドホテルのスイートルームに向かった
芸能人であるユノに一目惚れされた、なんて言われて
ひと晩共に過ごして…けれども僕は高級なお酒を飲み過ぎて、ユノはお酒に強くないのに僕に合わせて飲んでくれて…裸で触れ合うだけで最後まで、はいかなかった
ユノの家に来てから良い雰囲気になってユノと最後まで…と覚悟を決めたけれど、いざそうなったら恥ずかしいし、何より男同士でしかも自分が受け身になる、なんて30年間生きてきて考えた事も無かった
だから、結局怖気付いてしまって
『もう少し時間が経ったら』
とユノに言ったら、
優しいユノは待つと言ってくれたんだ
そして、今日、今度こそ、と
またもや覚悟をこっそり決めていた筈だった
けれども、ユノとレコーディングをする、なんて
ユノと出逢った事と同じくらい大きな出来事を経験した僕はユノの家に帰って来たら気が抜けてしまって、ユノに促されるまま眠ってしまったんだ
「……ん…」
目を覚ましたら外は漆黒で、
隣には僕に背を向ける格好でユノが眠っていた
シャワーも浴びずに、食事を摂ったままユノに寝室まで運んでもらったから、朝を迎える前にすっきりしたくて
そっとベッドから抜け出た
リビングで時計を見たらまだ夜中の2時過ぎで、
2時間弱しか眠っていなかったみたい
それでも栄養を摂って休んだ事で
身体はだいぶすっきりした
シャワーを浴びて寝巻きに着替えた
音を立てないように廊下を歩いて、
細心の注意を払って寝室の扉を開けた
動かないユノはきっと寝ていると思って、
その背中に少しだけ、触れるか触れないかの距離で手をあてた
「ユノ、好き…」
声にならないくらいの声を吐息に乗せて、
毎日溢れる思いを吐露した
恋は、若い頃は人並みにはしてきた、と思う
けれども夢の方が大切で、ひとりでいる方が気楽で、
定職に就いていない自分自身にも負い目があって
ここ最近は恋愛をしたいという気持ちすら無かった
それなのに、ユノと出逢って世界は180度変わった
好きだから頑張れる
好きだから夢を目指せる
好きな人に恥じない自分でいたい
堂々と、隣に立ちたい
眠気は醒めてしまったから
もう少しユノの体温を指先で感じていよう
そう思っていたら、
その身体が動いてこちらを振り向いて…
「チャンミナ、寝てる俺に告白したの?」
「ユノ…起きてたんですか?」
あっという間に長い腕に抱きすくめられてしまった
声ははっきりしているし、暗闇に慣れてきた目で見上げると、ユノの黒目がちな瞳はしっかり開いていて…
「チャンミナが起きたら襲おうかと思ってた」
「ユノは元気ですね…」
『襲う』なんて言われて恥ずかしくて
ぼそりと呟いたら額をこつん、と合わせてユノは笑う
「あはは、チャンミナが居るからだよ
ひとりだったら疲れ果ててたかも」
ひとりで寝るのが当たり前だったのに
恋なんて自分にはもう遠いものだと思っていたのに
ユノが居ればそれだけで幸せ
襲おうと思っていた、という事は
やっぱりユノは最後まで、そう思っているのだろう
好きだから、受け入れたい
怖いけれどきっと大丈夫
何より愛おしさが溢れて、
ユノの腕を掴んで自分からも近付いた
ユノが微笑んで、顔が寄せられたから
そっと瞳を閉じてキスをした
「ん…」
「チャンミナの唇気持ち良い」
「……ぅん…あ…」
上唇を食むように優しくキスをされたから
それに応えるように、ユノの厚くてふっくらした下唇を真似するように食んだ
「チャンミナ、キス…慣れてきたな」
「んっ…ユノとのキス…気持ち良い……あっ」
背筋をつう、と指でなぞり上げられて仰け反ったら
首の付け根に吸いつかれた
力が抜けて、立っていたならきっと
腰が抜けてしまったかもしれない
「前に付けた痕が薄くなってる…
また付けないと」
「…んっ…見えないところなら…」
蛋白な行為ばかりだった
蛋白な相手ばかりだった
たから、女性にも付けられた事なんて無くて、
それなのに『ユノのもの』だという証が、
それを鏡で確認する事を嬉しいと思ってしまった
「痛くない?」
「大丈、夫…んっ」
僕の背中をさ迷っていたユノの左手が
ゆっくりおりていって、尻に這わされた
この先にある行為は知識としては有る
だからこそそれが怖くて、2度も怖気付いた
でも、ユノはきっと早く、と思っているだろう
ごくり、と唾を飲み込んで待っていたら
下着と薄い寝間着の上から、ユノの指が窪みに伸びた
「っ…」
思わず、ユノの肩に置いていた手に力を込め
ゆっくり何度も押すように触れられて、
どうしたら良いのか分からない
「…チャンミナ」
「何…ですか」
「襲う、って俺が言ったから
このまま最後までって思ってる?」
「え…違うんですか?……あっ」
あっという間にユノの指が直接、
今まで布の上から触れていた場所に触れた
寝間着のズボンはウエストゴムだから、
その隙間から簡単に触れられてしまう
シャワーを浴びておいて良かった
怖いながらも内心少しだけほっとした
でも、布の上から触られるのと、
直接触れられるのとでは全く違って
痒いような、もどかしいような気分なんだ
「チャンミナとちゃんと気持ち良くなりたいから、
調べたんだけど…」
「え…んっ」
話しながら、ユノは僕の…受け入れる場所を軽く引っ掻くようにしたり、そっと押してみたり
触れられる事なんて無いのに、
段々痒いような感覚が気持ち良さに変わっていって、
それが自分で怖い
「男同士は簡単じゃないようだ
だから、今日いきなり、は無理だよ
それにもう夜中だから…」
「じゃあ、襲う、って…」
「ん?キスしたりしただろ?」
そう言って優しく笑う
何だか僕、もしかして、
物凄く愛されているのかもしれない
だって、正面から抱き合っているから分かる
お互いに反応してしまっているんだ
「ユノ、僕…気持ちの準備が出来るまでって言ったけど…やっぱりユノとだったら最後まで…」
恥ずかしくて下を向いて言ったら、
右手が頬に触れた
その反動で顔を上げたら、ユノは真剣な顔だった
「本当に?」
「…はい」
「ありがとう
でも、今日は本当に遅いから…
チャンミナ、次の休みはいつ?」
「え……」
頭の中でシフトを思い出して、気が付いた
「5日後…日付けが変わったから4日後、です」
それは奇しくも
旅行中の大家さんが戻って来る予定の日
つまり、僕がユノの家に居られなくなる日
本当なら自分の家に戻れるから喜ぶべきなのに、
その日を迎える事が寂しくて仕方ない
「じゃあ…その前日の夜だな」
考え込んでいたらユノの明るい声が聞こえて
見上げたらくすりと笑う
「何が?って顔だな、可愛いなあチャンミナは」
「だって何のことか…」
「男同士は慣らしても最初は大変らしい
特に受け入れる方は…
チャンミナの身体が心配だから、
次の日が休みの方が良いだろ?」
「…あ…」
何だかユノは、
僕よりもよっぽど僕の事を考えてくれているみたい
でも、せっかくユノと恋人として最後まで、
となったら直ぐに別々になるのを思うとやっぱり切ない
今が特別で、今が幸せなだけなのに
特別に慣れてしまったから駄目なんだよね
「どうした?やっぱり怖い…?」
「…あ、違います
ただ、その休みの日は
アパートの大家さんが戻って来る予定の日で…
多分、会いに行けば合鍵を渡してもらえるので…」
「…そうか、荷物も全部家だもんな
良かったな」
長い指で髪の毛を漉かれる
ユノの優しい指が好き
ユノの優しい笑顔が好き
でも今は、家に帰る事を『良かった』と
そう笑われる事が胸に突き刺さるように寂しかった
でも、そんなのは僕の我儘だから
ユノの隣に恋人として堂々と立ちたいのなら
自立しなければいけない
だから、寂しい気持ちを押し込めて笑った
「…じゃあ、家に帰る前日に抱いてくれますか?
痛くたってユノなら良いです」
「チャンミナが痛いのは嫌だよ
だから、明日から毎日慣らしていこうか」
「ユノが好きだって言ってくれたら…
それで大丈夫です」
首に抱き着いた
長い首にキスをすると、くすりと笑う
「好きだよ、チャンミナだけだ」
「…ありがとうございます」
例えこの家を出たって、
ユノのバックコーラスとして参加出来るという希望が有る
それなら、今出来る事を精一杯するだけ
「こんなに人を好きになった事が無いんだ
だから、上手に愛せているのか分からなくて…
たまに不安になるんだ」
「ユノでも不安になる事なんて有るんですか?」
思わず腕を緩めてユノの顔を見たら
「あのなあ」と恥ずかしそうな顔
「チャンミナはもう、
俺が普通の男だって知ってるだろ?」
「ユノはかっこいいし優しいし…
歌も上手くて…売れてるのに驕らなくて…」
「好きだから、かっこいい所を見せたいからだよ」
「一緒に寝ても、こうやって我慢してくれるし…」
「…俺も同性は初めてだから…
失敗してチャンミナに痛い思いをさせたくないから、だよ」
…でも、それってやっぱり凄く優しいじゃないか
弱いところだって晒す事が出来る
それって、ユ
がとても強くて優しい証拠だと思うんだ
がとても強くて優しい証拠だと思うんだ
「ユノの事、尊敬してます」
「…恥ずかしいだろ」
「ふふ、本当の事なので我慢してください」
今はもう、ユノとちゃんと通じ合えているって分かる
不安が無いわけじゃない
離れる事は寂しい
でも、絆は深めていけば良い
「何だか真面目な話になっちゃいましたね…」
「不真面目、いや…不埒な事もする?」
にやりと笑うとユノユノの顔になる
不意打ちで心臓がついていかなくなってしまう
だから、動じていないふりで下を向いた
「明日から…」
「あはは、そうだな」
一緒に暮らすのはあと数日
だから、一瞬一瞬を大切にしたくて
もう一度ユノを見上げた
それから、心臓に耳を寄せて
とくとくと刻まれる鼓動を聞いた
それはまるで音楽のようで…
「早く、またユノと歌いたいです」
「うん、俺もだよ」
歌はこどもの頃から好きだ
上手だと親に褒められて、
自分でもそうだと思って歌手を目指して、
それが本当に夢になった
でも、こんなにも歌いたいと
そう思ったのは、今が一番なんだ
まだ、スタートラインにさえ立ててはいない
それでも、諦めなくて良かった
ユノの唇がこめかみに落とされて、
小さく「おやすみ」と囁く
返事をしたつもりだったけれど、
それはもう夢の中だったのかもしれない
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きっと大丈夫 いいにおいがします。
ご訪問ありがとうございます(^∇^)
・平成26年4月 大腸がんS状部切除手術→ステージⅢaと判明
・平成28年12月 大腸がん肺転移のため左肺下葉部切除手術
・平成30年4月 膵臓転移のため膵体尾部切除手術
そんなこんなで大腸がんステージⅣの私ですが、日々悔いなく前向きに生きていくぞ!と自分を励ましながらいつも笑って♪過ごしたいと思っています(^_^)
*〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜*
こんにちは今日は良い天気ですねぇ~東海地方の梅雨入りは来週になりそうですね。
良いお天気につられて、今日の午前中はドライブがてら、とある天満宮へ人形供養のため出かけてきました
と言うのは、最近マイブームの断捨離のお陰で、廊下のクローゼットから色々な人形やぬいぐるみが出て来て、可燃ゴミで出すにはあまりにも忍びない(何か起きそうで怖い)人形があり、ネットで探したら毎日受け付けてくれる天満宮があったので、早速行って来ました
同じ市内だけど、あまり行ったことがない方面なので、ナビを頼りにドライブだgo〜〜
重さで祈祷料が変わるみたいで、2000円お支払いしましたよ。
人形供養の受付後はせっかくなので闘病平癒のお参りをしましたが、その近くに立て看板があってよーく見てみると。。。
おーーー私って今年は八方塞がりの年だってよ~~~(年はかぞえだから、まだ55歳ではありません!!53だよ(笑))
八方塞がりって悪い年ってことぉ!どーりで膵臓転移が起きたり、術後も合併症が起きたりって
ネットで調べてみると↓
「人生の冬の時期とされる、厄年や大殺界と八方塞がりは、まさに内なる自己を養う時期「胆力」を育てる時です。
それは周りから観たら、表面上は何も動いていないように、じっとして変わっていないように見える時間かもしれませんが、内なる強さを育て養うための大切な時だ
考えられます。
そしてその養った自分が、体感できる成果を出せるのが、草木が芽吹く春であり、夏であり、収穫の秋に繋がると思うのです。」
てなことも書いてありましたお仕事を辞めて、自分のためにヨガや鍼灸や食事療法や色々やっていくことが、春に繋がるのね〜〜〜と勝手に解釈してみる(笑)
八方が塞がっていても、きっと大丈夫と思い込むことにするわ
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