先月発売したばかりで大ヒット中の新刊『新世界』(13.5万部)を全文無料公開
キンコン西野が大ヒット中の新刊『新世界』を全ページ無料公開した理由とは!?
おはようございます。
エンターテイメントに魂を売っているキングコング西野です。
今日は、出版業界の方や、本を愛している全ての人と共に考えたいテーマについて、そこそこマジメな記事を書かせていただこうかと思います。
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紙の本を売りたいのなら、紙の本の本当の価値を知れ
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去年一月に大ヒット中の絵本『えんとつ町のプペル』を全ページ無料公開しました。
「そんなことをしたら(無料公開が当たり前になってしまったら)クリエイターが食えなくなるじゃないか!」
と多くのクリエイターさんや、そのファンの方から批判されましたが、こちとら、ただの思いつきや感情で無料公開したわけではなく、その行動の裏には広告の数式がキチンとあったので、ウン千万人から批判されようが無視。
絵本の無料公開に関しては「お母さんの行動パターン」を読めば、「たしかに、そう言われると、絵本は無料公開した方が良いな」と納得いただけると思います。
世の「お母さん」が抱えている問題は、以下の二つ。
①お金の余裕が無い
②時間の余裕が無い
お母さんは、お金の余裕が無いので、なんとしてでもハズレの買い物をするわけにはいきません。
となってくると、ハズレるかもしれない絵本を子供に買うわけにはいきません。
なので、お母さんが絵本を買うときは、「本屋さんで絵本を最後まで立ち読みして、面白かったら買う」という行動に出ます。
無料公開(ネタバレ)を危惧するも何も、そもそもお母さんはネタバレしている絵本にしか反応していないわけですね。
絵本の場合は、ネタバレさせて、はじめて『ヒットの挑戦権』を貰えるわけです。
ただ、お母さんには時間の余裕がありません。
はやく家に帰って夜ご飯を作らなきゃいけないので、本屋さんでアタリの絵本が出るまで、何十冊も「立ち読み」するわけにはいかないのです。
結果、お母さんは、確実にハズレない絵本を選びにかかり、自分が子供の頃に親から呼んでもらって面白かった絵本を手に取ります。
絵本売り場で、数十年前のベストセラーが今なお平積みされている理由がソレです。
ここを突破する方法は一つで、お母さんが洗濯物を乾燥させている時間や、お湯を沸かしている時間……そういった隙間時間に「立ち読み」させてあげることができればいいわけで、隙間時間は家の中にあるので、家で「立ち読み」ができるように、『えんとつ町のプペル』をネットで無料公開してみました。
あと、絵本の場合だと「読み聞かせ」ですね(*^^*)
絵本は「読み聞かせ」という親子のコミュニケーションツールとして機能している一面があって、スマホ(小さい画面&縦スクロール)で読み聞かせするのはチョット厳しい。
読み聞かせするには、ある程度の画面のサイズがないとツライので、その時、紙の本が必要になってくるわけですね。
つまり、絵本には、ネットで仕入れることができる『情報としての絵本』と、読み聞かせ時に発動する『コミュニケーションツールとしての絵本』という二つの側面があって、絵本における紙の本の価値は後者ですね(*^^*)
僕らは、そこにお金を払っているわけです。
詳しい話は、この本に全部書いたので、読んでみてください。
作品を生んで食っていく全クリエイターさん必見です。
『えんとつ町のプペル』の無料公開は「そんなことをしたら売れなくなるだろ!」と、たくさんのバッシング批判をされたものの、無料公開直後に売り上げは伸び、メガヒットに繋がりました。
その後、書籍の無料公開は出版業界の広告戦略の一つとして認知され、今日も、そこかしこで無料公開がおこなわれております。
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「ビジネス書も無料公開した方が売れる!」と言い切る為の条件
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『えんとつ町のプペル』の無料公開以降、ビジネス書が無料公開されている現場をチョコチョコ目にしましたが、そこで、どのような結果が出ようが「ビジネス書も無料公開した方が売れる!」とは言い切れないと思いました。
理由は、そこで無料公開されていたビジネス書が、すでに売れきった本か、そもそも誰にも見つかっていない本だったので……言ってしまえば、「本来、今日の売り上げ部数はゼロ冊だったところを、無料公開したことによって10冊になりましたー」という話で、これだと、『無料公開した方が売れる!』とは言えません。
『無料公開した方が売れる』と言い切るには、「何もしなければ一日に100冊売れる本を、無料公開して、無料公開後の売り上げが50冊に減るのか、500冊に増えるのか?」…そのデータを取らなくてはなりません。
言ってること、分かりますよね?
手前のお金なんかよりも、実験結果の方が遥かに価値があるので、今回、先月出たばかりで大ヒット中の新刊『新世界』を全ページ無料公開してみることにしました。
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紙の本の価値はどこだ?
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この御時世、そこかしこのSNSでビジネス書の内容がコピペ&レビューされているので、その気になってかき集めれば、その本に何が書かれているかは大体分かります。
ていうか、そもそも本屋さんで「立ち読み」できるので、根性さえあれば、ビジネス書は買わなくても読むことができる代物です。
「買って読んでもいいし、買わずに読んでもいい」となっているのが今のビジネス書です。
では、何故、人は、スマホで無料で読めるビジネス書を買うのでしょうか?
理由は、たくさんありますが(この辺の議論は僕ので散々やっているので、僕のを覗いてみてください)、あまり長くなっても仕方がないので、今日は2点だけ。
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紙の本は途中から読める
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今回は『新R25』さんと組んで、新刊『新世界』を全ページ無料公開させてもらいました。
本当に最後の最後まで、お金を払わずに読むことができます。
ただ、スマホの特性上、ストレスが一つだけあります。
「200ページ目まで読んで、一旦、閉じてしまうと、読書を再開する時には、また200ページ目までスクロールしなきゃいけない」という、とんでもねーストレスです。
紙の本だと、そこに栞を挟んでおけば、1秒後には読書を再開できますが、スマホで無料公開されている本だと、そうはいきません。
200ページ分をスクロールするのは、なかなかのストレスです。
「そんなことするぐらいだったら、紙の本を買った方がよくね?」と考える人も中にはいらっしゃるでしょう。
紙の本の価値は「途中から読めること」と定義してみました(*^^*)
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紙の本はスマホを奪わない
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さっきの続きなのですが、無料公開された『新世界』を最後まで読むには、中断が許されない(中断したら、また最初からスクロールしなきゃいけない)わけで、ナンジャカンジャでブッ通しで2時間ぐらいは『新世界』にあなたのスマホを捧げなきゃいけないのですが、そんなことできます?
途中、メチャクチャ気になってる女の子からのLINEが入ってきた時に、あなたはそのLINEを後回しにできますか?
ほぼ無理だと思います。
スマホが無ければ生きられないこの御時世に、2時間もスマホを奪ってしまう『新世界』(ネット無料公開)と、1秒もスマホを奪わない『新世界』(紙の本)とでは、どちらが喜ばれますかね?
そもそも売り物なので、すごく逆説的ですが、「もう、こうなったら、お金を出してでも『新世界』を読みたい!」と考える人もいらっしゃるのではないでしょうか?
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実践家であれ
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これらの仮説を、仮説のまま終わらせてしまうのが、批評家です。
僕は実践家なので、実際に自分の肉を切って、検証してみようと思い、今回、
先月出たばかりで大ヒット中の『新世界』をネットで全ページ無料してみることにしました。
世の中の常識が勝つか、僕の読みが勝つか、見ものです(*^^*)
一度、覗いてみてください→
【追伸】
今回のアクションは、かなり前からオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』で議論してきたものです。
オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』内では、いつもこんな議論&実験が飛び交っています。
興味がある方はコチラ↓