あくびの見方

あくびの見方

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東大教授はあくびの夢を見るか

ここが「日本一やる気のないパン屋」としてネットで有名になった「キリサメパン」。

なんだろう?木製のガラス引き戸はレトロ感満載と言えば聞こえがいいが、はっきり言って「朽ちかけている」。

昔はきちんと営業していただろうことは外壁の剥げた水色の塗料のわずかな痕跡から見て取れる。

その外壁沿いに4つ並んでいる植木鉢には雑草が生えている。

紅白の張り出しテント、「キリサメパン」の立派な看板、水色に塗られた外壁、軒先を飾る色とりどりの花たち・・・だったのだろう。

取り柄と言えば周りが畑ばかりなので土地に余裕があって駐車スペースも6台分ぐらいはあることぐらいか。

昔はここに車が埋まり、朝から学生や会社員が並んでいたのだろうか。

きちんと手入れさえ続けていればレトロ感のあるお店だったのだろうが・・・。

「こんにちは~」

2枚引き戸のどちらを選ぶか迷ったが左のを右に引いた。

ガガ、ガガガガ、ガ・・・。

建付けが悪くなった扉。

ガラスがビビる音を立てる。

全然スムーズじゃない。

「どなたかいらっしゃいませんか?」

中は薄暗くて、ここがパン屋でいいのかと思うぐらい湿度が高い。

ディスプレイ棚には食パンが一斤と菓子パンの類がちらほら。

見える範囲で5,6個あるだけ。

「商品無いね」

「売れてしまった・・・ようには見えないか・・・はは・・・」

ネットにて得た情報では陰気臭いおやじがやってるらしい。

返事がないので再度「あの、」と言いかけたとき人が奥から現れた。

「はい・・・どなたさん?」

パン屋さんと言えば働き者で朝早くからパンを捏ね、焼き、忙しく棚に並べ、白の作業着が良く似合う人たちというイメージがあったが、奥から出てきたおじさんを見てそれがガラガラと崩れ落ちた。

グレーのヨレヨレのTシャツに汚いジーンズ。サンダル履き。

頭はボサボサで無精ひげ、清潔感ゼロ。

目がとろ~んとしていて覇気がない。

何よりもカピバラたちは客かもしれないのに「どなたさん?」ってどうよ。

普通は「いらっしゃいませ!」でしょう。

ネットの噂になるぐらいのやる気の無さである。

もしもここで餓鬼魂を捏ねてパンを作っていたとしたら、この店舗やこの店主に関係なく今頃大繁盛しているだろう。

だがそんな気配は皆無だ。

「週刊クイダメ社の柏原と申します。今回はお店の取材をさせていただこうかと思いまして・・・」

カピバラが名刺を差し出した。

店主は手をひらひらと振った。

「帰ってよね」

「ダメでしょうか?」

「てかさ、あんたらあれでしょ?うちがなんて言われてるか知ってるから来たのでしょ?」

それはネットでの「日本一やる気の無いパン屋」のことを言っているのだろう。

「まぁ確かにそうなんですが、ちょっと事情がありまして」

「俺さ、疲れてるんだ。あんたらの事情聴く暇があったら寝たいんだけど」

寝るって・・・仕事は?

「パン屋さんは朝早いでしょうからお疲れのことと思いますが、少しでいいので、お話を」

「ふあぁぁ~~」と大あくび

「朝早くなんてないよ。さっきあんたらが来たから起きてきたんだよ」

「だってそこの」

「このパンは昨日の夕方焼いたんだよ。昨日の残りと言うか、売れてないけどね」

「え・・・」

「じゃあ、俺寝るわ」

そういうと男は奥に引っ込んだ。

これではパンどころか物を売るのは無理だ。

僕と綾麻呂くんはとりあえず引き上げた。

出直しだ。

「予想以上でしたね」

「ちょっとショッキングでさえもあったよ」

僕は助手席でスマホを取り出すとネットに繋げた。

「店主の名前は霧雨小十郎か。素浪人みたいな名前だな」

今度は霧雨小十郎で検索したらかなりのヒットがあった。

「え?」

そこにはパンに関するコンクール優勝などの輝かしい経歴が並んでいた。

「あの・・・パン見ました?」

「ん?」

次の綾麻呂の言葉に耳を疑った。

「なんかカビ生えてたかもしれない。ありゃ昨日焼いたとか言うしろものじゃないですよ」

「・・・」

                  つづく

 

グローバリズムの崩壊とあくびの勃興について

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