シュッシュッを勝手に応援するサイト
順調にチラシを減らしていく相葉さんを横目に、見様見真似で配り始めたらやっぱり俺も楽しくなってきちゃって夢中で配り続けてるうちにあっという間に残りわずか。
というか意外にみんな貰ってくれる。
こんな簡単でいいの?こんなんにコツとかほんとにあんの?
最後の1枚を手渡して、拍子抜けするぐらいあっさりと終わったそれに、相葉さんの方を見てみればとっくに空っぽになってたであろう箱を持ちながら相葉さんが笑ってる。
「へへ。俺の勝ちー」
「いや、そりゃそうでしょ。俺初めてだし」
ずるいんだよなあって顔をしかめる俺に、にのだってずるいじゃんって。え、なにがよ。
「可愛いやつは得だよなあ」
「は?」
「みんなにの目当てだったじゃん。おまえ気付いてないの?」
「はあ?」
なにそれ。何言ってんの。それは相葉さんの方でしょ。何度も同じ人が貰いに来てたの気付いてないわけないでしょうに。それも一人や二人じゃないのに。
「マスクつけさせりゃあ良かった」
失敗したーって悔しがる相葉さんに思わず笑っちゃう。
んふふ。なによそれ。そんな作戦ずるくない?
おまえってそういうずるいとこあるよね。
穏やかな顔して意外と負けず嫌いだし。
「どっちにしろ相葉さんが勝ったんだからいいじゃん」
マスクしててもしてなくても関係ないよ。
相葉さんの勝ちだよ。悔しいけどね。
そう思う俺もたいがい負けず嫌い。
「まあな。見たか、俺の技」
かっこよかったろ?
シュッシュッと手首のスナップをきかせて、その技とやらを披露し始
たけど。
バカじゃん。チラシ配りにかっこいいもなにもあるかよ。
技がかっこいいんじゃなくて、相葉さんがかっこいいの。俺のこと、可愛いからだとか言うくせに、なんで自分のことはわかんないのかなあ。
あ、やばい。思い出したらまた顔が熱くなってきた。
「あ、にの顔赤いじゃん」
「え?いや、」
「寒いよな。ずっと立ちっぱなしだったし」
よし、ラーメン食いに行くか。
にっこり笑う相葉さんに、いや、だからなんでわかんないのかなって。
わかられても困るけど、ちょっとぐらい気づいてくれたっていいんじゃないの。
俺、結構顔に出てると思うんだけどな。
「楽しかったね」
「うん」
「にのも楽しかった?」
「うん、意外とね」
くだらないゲームもやったことだしね。
そう言って笑ったら、相葉さんの顔がぱあっと明るくなった。
「良かったあ。にのが楽しんでくれて」
だって無理やり付き合ってもらったじゃん?
だったらせめて楽しくやってもらいたいなって思って。なんてニコニコして言われちゃって。
…ほんとずるいよね、こういうとこ。
結局このあと行ったラーメン屋も、負けた俺が財布を取り出そうとするのをさり気なく遮ってさ。
当たり前のように奢ってくれるんだもん。
こんなの好きにならない方がおかしいじゃん。