内心を大切にしたい、あなたに

のお見合い直前、犬の具合が悪いことに気づいたものの、

苦渋の決断でお見合いに行った話の続きです。

 

 

お見合いの場所は、電車で20分ほどかかりました。

今までは、電車の中でお見合い相手のプロフィールを見て予習していたんです。

 

でも、今回は愛犬のことが気になって

車内では「犬　ふらつき」というワードで病気を検索していました。

犬がふらつく病気としては、愛犬が昨年発症した突発性前庭疾患の可能性が最も高かったですが、椎間板ヘルニアという病名も出てきて、すごく不安になりました。

 

 

今回のお見合いは、商業ビル内にあるインフォメーションセンター前が待ち合わせ場所でした。

 

目的地の商業ビルに到着し、ビルの入口でお見合い相手に似ている人を見かけたので、

もしかしたらあの人なのかな？という気がしたんです。

 

でも、今回の場所は、入口ではなくビル内のインフォメーションセンターの前です。

待ち合わせの場所が微妙に違います。

 

それに、直前にプロフィールをチェックしなかった私は、

入口にいる人がお見合い相手なのかどうか、いまいち確信が持てませんでした。

 

結婚相談所で出会う人は、みんな同じように見えてしまうので・・・

 

だから、私はその人に声をかけずに、指定されたインフォメーションセンターに向かいました。

 

待ち合わせ場所に時間ぴったりに到着したのですが、それらしき人はまだ到着していません。

 

インフォメーションセンターからビルの入口を見やると

先ほどの人は相変わらず入口に佇んだままで微動だにしません。

 

どうやら、あの人っぽい気がする。

でも、私は過去にトラウマから、

絶対にあの人だ！と確信が持てないと、自分から声をかけられないのです。

できれば、相手から声をかけてもらいたいんですよね。

 

待ち合わせ場所に相手がいない。

ちょっと離れた場所に、それらしき人がいる。

 

こんな時、相手の連絡先を知っていれば、電話をかければ済む話だけど、

お見合い時は相手の連絡先を知らされていません。

 

でも、遅刻したり、待ち合わせ場所で相手に出会えなかったときのために

緊急ダイヤルを使って連絡を取り合うことはできます。

でも、一度も緊急ダイヤルを使ったことがないので、使い方がよくわかっておらず・・・。

 

だから、家を出る直前に愛犬の具合が悪くなった時も、咄嗟に相手にどうやって連絡を取っていいかわからずにパニックになり、

たぶん大丈夫だと判断して家を出てしまったのです。

 

とにかく、待ち合わせ場所は100％ここで間違いないのだから、

しばらくここで待ってみよう。

 

すると、入口にいた男性がビルの中に入り、

私の方にやってきたんです。

 

「あの・・・Rikakoさんですか？」

 

やっぱり、あの人がお見合い相手だったんだ・・・。

なぜ、ずっと入口で待っていたんだろう。

 

そして、相手の声がかなり甲高かったことに、内心ちょっとビックリしました。

 

 

利用中の相談所です。

 

 

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深夜のレギュラー番組の中で

 

洗濯物に花粉が付かない方法を訊かれ、

 

「おまじないです」

 

と、答えてから内心『ヤベッ・・・』

 

と少々焦った。

 

 

 

周りも動揺するようなメルヘンな答えを

メインキャスターにも弄られたが、

 

それは雅紀と俺の朝の習慣だったから・・・。

 

 

 

 

冬が終わりに近付き春の訪れを感じ始めると

 

あいつの気配も感じ始める。

 

それは俺が直接感じる事ではなく、

 

雅紀の目が潤み鼻がグスグスなり始めるから

 

『花粉の季節がやって来たのか・・・』

 

と分かる。

 

 

季節になる前に注射をしたり薬を飲んだりして

 

対策を講じても毎年辛そうにしているから、

 

気休めでも何かしてやりたくて始めたことだった。

 

 

 

今日は先に家を出る雅紀が、

靴を履いて立ち上がると振り向いて

見送る俺を笑顔で見上げる。

 

そんな雅紀を包むように抱きしめて、　

 

「雅紀に花粉は付かない。

　雅紀は花粉なんかに負けない！」

 

と耳元で囁いてから

 

体に廻した腕にぎゅっと力を込めると、

 

「うん、負けない！」

 

と雅紀が頷いて体を放した。

 

これが今年から始めた、

出かける前に行われる二人の習慣。

 

体を離した雅紀が

 

何かを思い出したようにクスクス笑うから、

 

「何？」

 

と問いかけると、

 

「・・・だって、しょぉちゃん、この前ZEROで

　洗濯物に花粉が付かない方法訊かれて

　『おまじない』って答えてたじゃん。

　絶対この事思い出してるなって思ったんだ」

 

と、くふふふ・・・と笑う。

･･･そうだよ。

だから、つい口を突いて出てしまった言葉に

内心焦ったんだよ。

 

「気休めだけどな・・・」

 

心の声が悟られないように言うと、

 

「そんな事無いよ！今年まだ全然平気だし！」

 

と気を遣ってくれる。だけど、

 

「それは、お前が色々対策してるからだろ？」

毎年情報を仕入れて、乳酸菌を摂ったり

鼻うがいをしたりと、体質改善の努力を

雅紀なりに頑張っている。

 

自嘲気味になる俺に、

 

「しょぉちゃんがおまじないしてくれるから

　今年頑張れてるのもホントだよ。

　おまじない、やめるなんて言わないでね？」

 

『上目遣い小首傾げ』の必殺技を久しぶりに

 

繰り出して来た。

 

 

・・・・・これに敵うヤツがいるんだろうか？

 

 

「やめないよ」

 

敵わない俺はあっさりと降伏する。

 

「くふふふ、良かったぁ」

 

と綺麗な笑顔を見せる雅紀に

 

俺の中で別の心配が出て来た。

 

 

「じゃ、行ってきます」

 

と行こうとする雅紀の腕を引き寄せると、

 

段差で俺より低い雅紀の顎を掬い上げ

 

覆いかぶさるようにキスをする。

 

 

唇が触れる寸前まで

 

驚きに見開かれた黒曜石の瞳に

 

独占欲をむき出しにした男が写っていた。

 

 

「いきなりどうしたの？」

 

と、頬を染めて目と唇を潤ませた雅紀に、

 

「おまじない」

 

と答えると、

 

「これもおまじないなの？くふふふ・・・」

 

と嬉しそうに笑い、

 

「今日も花粉に負けないぞー！」

 

と元気に玄関を出て行ったけど・・・、

 

・・・・・・違うよ、雅紀・・・。

 

 

 

今のはおまじないだけど

 

花粉が付かないおまじないじゃなくて、

 

無邪気に笑顔を振り撒くお前に

 

害虫が付かないようにするおまじないだよ・・・。